第1話:一つの注文が、二つに割れた (企画編)

AI用語集を公開して、「余白」に置くネタも三つ目になった。次のお題は、前から決めていた。チャットボットである。

注文は、こうだった。「余白」の『AIと、話してみる。』のページで使えて、あわよくば仕事の問い合わせも呼び込めるもの。遊び場と営業窓口を一台で兼ねる、便利なやつ。いつものように、Fable 5(Claudeのモデルのひとつ)との壁打ちから始めた。

返ってきたのは、今回も作業開始ではなかった。その二つは、目的が真逆です——という整理だった。

言われてみれば、そうだった。仕事の相談を受け取る窓口に必要なのは、確実さである。AIは面白いが、ときどき堂々と間違える。相談に来た人に間違ったことを言う受付は、営業窓口として失格だ。一方、「余白」に必要なのは面白さで、こちらは多少の脱線がむしろ味になる。一台で兼ねようとすると、どちらつかずの中途半端が出来上がる。

そこで、ボットは二つに割れた。ひとつは相談受付ボット。あえてAIを使わない。選択肢を選んでいくと相談文の下書きがまとまる、台本だけで動く受付。もうひとつは「AIと、話してみる」の本格AIチャット。こちらは自由に喋る。

面白かったのは、マネタイズに近い方からAIが外されたことだ。AIを売り物にしている会社が、いちばん大事な窓口でAIを使わない。冗談のようだが、理屈は通っている。相談受付の正体は「自由な会話」ではなく、「相談内容の整理と文章化」だった。整理と文章化に、アドリブは要らない。

費用は、いつも通りゼロ円で作る。GoogleのAI(Gemini)の無料枠と、GAS(Googleの無料のプログラム置き場)を使う算段だった。ただし壁打ちの席で、注意書きがひとつ添えられた。無料の仕組みは、Googleの都合でいつ変わるか分からない、と。

この注意書きが当日中に現実になることを、朝の時点ではまだ誰も知らない。

(第2話につづく)

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