第1話:「あなたのAI活用タイプ」は、こうして生まれた (企画編)
「余白」には、まだ「AIニュース」しかなかった。
サイトのリニューアルを終えてから、ずっと気になっていたことがあった。「余白」というページに、いつか「チャットボット」と「AIサービス」を足したい。そう決めていたのに、手をつけられずにいた。
その日は、久しぶりにFable 5(Claudeのモデルのひとつ)と壁打ちをする時間が取れた。テーマは「AIサービス」。自社サイトに置く実験的なコンテンツとして、何を作るか。
条件をひとつだけ決めていた。お金をかけないこと。私の目的は3つある。会社のプロモーションになること。自分のAIの知識や技術が育つこと。そして、AI系の仕事の問い合わせにつながること。この3つに効くもので、かつゼロ円で成立するもの、という難しい注文だった。
Fable 5から返ってきたのは、意外と筋の通った答えだった。ゼロ円でも成立する仕組みは3つあるという。
ひとつは、AIを一切使わない「AI風」のツール。診断チャートのようなものは、裏側がただのプログラムでも十分に成立する。壊れないし、何万人に使われても追加費用はゼロ。ふたつめは、AIそのものは動かさず、訪問者の入力から「良いプロンプト(AIへの指示文)」を組み立てて渡すだけのツール。訪問者は、それを自分の無料のChatGPTやClaudeに貼るだけでいい。三つめは、プロンプト集やテンプレート集をそのまま配布する方式。
提案されたのは、この3つを踏まえた具体案だった。中小企業向けの「AI文章お助けツール」シリーズ。5〜7問の質問に答えると診断結果が出る「AI活用度診断」。そして、ダメなプロンプトとプロの改善版を見せる「プロンプト改造室」。
一番ピンときたのは、診断だった。
ただし、ひとつだけ直したいと思った点があった。提案は「あなたの会社のAI活用タイプ」という、企業向けの診断だったのだ。今のサイトを見に来てくれる人はまだ多くない。だとしたら、担当者が上司に見せるような堅い診断より、「あなたのAI活用タイプ」と、個人に向けた方が楽しいのではないか。そう伝えると、Fable 5もすぐに同意した。会社向けの診断は「誰かに見せるまでの距離」が遠いけれど、個人向けなら、その場で遊んでもらえる。自分のことを教えてくれるものは、シェアもされやすい。
もうひとつ、思いついたことがあった。この診断ツールを作っていく過程そのものを、「読みもの」の記事にできないか。ちょうど、以前「試行錯誤。」というシリーズで、サイトを作る過程を綴ったことがあった。あの続きとして、今度は「AIと一緒に診断ツールを作ってみた」という記事が書けるのではないか。
こうして、この夜の壁打ちは「あなたのAI活用タイプ診断」を作る方向に決まった。判定の仕組みは、2つの軸を掛け合わせるマトリクス方式でいく。8問前後の質問に答えてもらい、タイプが決まる。名前はまだ仮だが、「散楽」という屋号にちなんで、一座の役回りのような名前にする案も出ていた。
まだ何も形になっていない。あるのは、方向性と、いくつかの仮の言葉だけだ。けれど、「会社向け」ではなく「あなた向け」に変えた、あの小さな決断が、後になって効いてくることになる。
(第2話につづく)

