第3話:某シール方式と、同じ少年の物語 (イラスト編)
イラストを付ける、と決めてから話が一気に具体的になった。
大事な分岐がひとつあった。イラストは、診断のたびにAIがその場で描く方式にはしない。タイプごとに1枚、事前に作っておく方式にする。その場で生成する方式だと、使われるたびに画像生成の費用が発生してしまい、ゼロ円の原則が崩れる。絵柄もそのたびにばらつくし、生成を待つ時間が「気軽さ」を壊してしまう。事前に作っておけば、コストは制作時の一回きりで済み、テイストも完全に揃えられる。
絵柄は、「散楽」の世界観に寄せることにした。猛獣使い、座付き作者、批評家、客席。どれも、そのまま一座のキャラクターとして描ける題材だった。並べたときに「劇団の顔見せポスター」のようになったら、診断を超えてサイトの資産になる。
イラストの枚数について、欲を出した。1パターンにつき数種類の絵があって、表示がランダムになったり、ある条件を満たさないと出てこない「隠しコマンド」的な絵があったりしたら、もっと面白いのではないか。再診断する理由になるし、「隠し絵があるらしい」という噂は、隠しタイプと合わせて燃料が二倍になる。
ただし、そこには数字の壁があった。5タイプ×5パターンとなると25枚以上。イラスト制作の難所は枚数そのものより、「同じキャラクターに見え続けるか」だった。1枚ごとに顔や絵柄が変わってしまうと、バリエーションではなくただの別人になる。対策は、タイプごとに「基準の1枚」を作り込み、それを親として派生を増やす手順だった。
そして、隠し要素の仕掛けとして思いついたのが、ビックリマン方式だった。同じイラストのままで、背景や配色にだけ特別感を足す。「同じ絵なのに、キラ背景だと嬉しい」。絵を増やさずに価値だけ増やせる、コストゼロの原則と相性のいい仕掛けだった。キラの光り方は画面装飾用のプログラムで再現できるので、絵を作り直す必要すらない。80年代のコレクターシールを思わせる雰囲気は借りつつ、実在のキャラクターやデザインそのものには寄せない。そこだけは注意して進めることになった。
たたき台がまとまり、質問・タイプ文章・イラスト生成用のプロンプトが一式そろった。タイプ名は、猛獣使い、座付作者、目利き、客席、そして隠しタイプの座長と推し活。読んでみると、そのまま作っても話題になりそうな仕上がりだった。
イラストの制作は、Googleのサービスを使って自分の手で進めることにした。まず出来上がったプロンプトで、猛獣使い型を一枚描いてみた。二頭身、太い輪郭、光輪をまとったロボットライオン。設計図どおりの、かなりの当たりだった。しかもこの一枚は、意図せずすでに「キラ」の仕上がりになっていた。金縁とホロ風の背景。通常版はもう少しおとなしく作り直し、この豪華な一枚は「猛獣使い型のキラ」としてそのまま採用することにした。

このキャラクターが、猛獣使い型の「基準」になった。以降の派生ポーズや通常版の背景は、必ずこの一枚を参照画像として渡しながら作っていく。
そうして出来上がったのは、全19枚のイラストだった。当初の想定より、ずっと豪華になっていた。しかも嬉しい誤算があった。全タイプが、実は「同じ少年」の別の衣装、別の役回りになっていたのだ。最初は別々のキャラクターを想定していたはずが、診断は「自分の中のタイプ」を映すものだから、同じ人物が役を演じ分けている方が、むしろ筋が通っていた。ひとりの演者がいろいろな芸を見せる、という「散楽」という屋号そのものの説明にもなっていた。狙って出せる当たりではなかった。
画像のファイル名を、タイプごとに整理し直した。猛獣使い、座付作者、目利き、客席、そして隠しタイプの座長と推し活。画像の総容量は当初135メガバイトあったものを、16メガバイトまで圧縮していたのだが、まだWebで使うには重かった。もう一段の軽量化を挟んで、ようやくツール本体の制作に進む準備が整った。
「GO」の一言で、次の工程が始まった。
(第4話につづく)

