AIにカルタの絵を描かせたら、読み方を間違えた。——カルタ制作記(第2話)

カルタの絵を描いてもらうことにした。

ただし、描くのは私ではない。AIだ。正確に言うと、Geminiという画像生成AIに、Claudeが書いたプロンプト(絵の指示書)を渡して描かせる。AIが書いた台本を、別のAIが演じる。なんだか劇団のようである。

最初の一枚は「北極星」にした。

指示はこうだ。小さな丸いロボットがドヤ顔で夜空を指差している。でも空は曇っていて星が見えない。隣の少年が呆れている。吹き出しには「このプロジェクトの北極星は——」。カードの下に赤い帯で「ほ」の一文字。

Geminiが返してきた絵は、思ったより良かった。ポップで、コミカルで、トレーディングカードのような質感がある。

ただ、一つ問題があった。

「北極星」の上に、小さな文字が載っている。ルビだ。読み仮名。しかもそこに書かれていたのは——「ほっちょうくせい」。

北極星の読み方を、AIが間違えた。

思わず笑った。口ぐせカルタを作ろうとしたら、AIが口ぐせどころか漢字の読み方を知らなかった。「ほっちょうくせい」。どこの星だ。

ここから、試行錯誤が始まった。

まず「ルビを入れるな」とプロンプトに書き足した。「漢字の上にルビや読み仮名は絶対に入れないこと」。日本語で、念を押すように。すると、次の絵からはルビが消えた。効いた。

では英語のプロンプトではどうか。「Do NOT add furigana」と書いてみた。結果、ルビはまた現れた。しかも今度は「ほっきょクせい」。微妙に惜しくなっている。カタカナの「ク」が混ざっているあたり、AIなりに努力した痕跡はある。が、間違いは間違いだ。

英語で指示すると、もう一つ困ったことが起きた。カードにHPゲージやレベル表示が勝手に追加される。カルタを頼んだのに、RPGが始まってしまう。どうやら英語で「カード」と言うと、AIの脳内ではトレーディングカードゲームの引き出しが開くらしい。

日本語で指示すればルビは消え、RPG化も起きない。結論は明快だった。日本語プロンプト一択。

もう一つ、大事なことに気づいた。

最初のプロンプトでは、ロボット(AI)が困っていて、少年(人間)も困っていた。二人とも困っている絵。
ーーそもそも。「AIの口ぐせなのに、そのAIが戸惑ってるのはおかしくない?」

言われてみれば、その通り。AIは自分の口ぐせを口ぐせだと思っていない。北極星も堀も、彼にとっては真面目な提案だ。だから、ドヤ顔で言うはずだ。困るのは、それを聞かされる人間のほうだ。

役割を入れ替えた。ロボットはドヤ顔で口ぐせを言う。少年は呆れ顔でツッコむ。漫才のボケとツッコミだ。

描き直してもらったら、途端にカルタらしくなった。

絵だけの版も試した。吹き出しを消して、純粋にイラストだけのカード。絵の品質は悪くない。でも、眺めてみると何かが足りない。「これはどの口ぐせのカードなのか」が、絵だけでは伝わらない。北極星を指差すロボットの絵を見て、「あ、これは”北極星を見据えましょう”のカードだ」と思える人は、すでにAIの口ぐせに詳しい人だけだ。

テキスト込みに戻した。吹き出しに台詞を入れ、カードの下に頭文字を置く。これで、カルタとして成立する。

「堀」も「種をまく」も、同じ手順で描けた。テンプレートができたのだ。ロボットの演技とポーズ、少年のリアクション、背景で「ないもの」を描く——この三点を差し替えれば、どの札も作れる。量産の道筋が見えた。

思えば、イラストのテスト工程そのものが、カルタの制作過程そのものだった。NG画像の山は、そのまま記事のネタになる。「AIにカルタを描かせたら読み方を間違えた」「カルタを頼んだらRPGが始まった」「ロボットが分裂した」。

失敗を笑いに変えるカルタを作っている最中に、新しい笑いの素材が生まれていく。なかなか、効率の良い企画だと思う。

(第3話につづく)

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