役割分担は、いつもの方式にした。コードと手順書はAIが書き、設定作業は私がやる。Googleのツールの勉強も兼ねているので、手を動かすのは人間の側と決めている。
仕組みはこうだ。訪問者のブラウザから、GAS(Googleの無料のプログラム置き場)に作った中継サーバーを経由して、Gemini(GoogleのAI)に話しかける。中継を挟むのは、APIキーという「AIを呼び出す鍵」を人目に触れさせないためである。
最初の躓きは、些細な迷子だった。鍵の発行画面にあるはずの「Get API key」ボタンが、見つからない。画面が新しくなっていて、正解は左下の鍵アイコンだった。この程度は、準備運動である。
本番のトラブルは、鍵を使う段になって来た。403、「プロジェクトはアクセスを拒否されました。サポートにお問い合わせください」。原因を調べると、仕事用アカウント——つまりGoogle Workspace(会社ドメインの有料契約)で作ったプロジェクトが、Gemini側から一律で門前払いされる既知の問題だという。世界中で報告が上がっていて、頼みの綱のサポート窓口は、事実上機能していない。
解決策は、拍子抜けするものだった。個人のGmailアカウントで鍵を作り直す。それだけで通った。仕事の道具は仕事用アカウントで揃えるのが行儀だと思っていたが、行儀の良さが門前払いの理由になることもあるらしい。
一難去って、次は404。「このモデルは新規ユーザーにはご利用いただけなくなりました」。朝の調査で「現役」と確認したAIモデルが、夕方には新規受付を締め切っていた。無料の仕組みはGoogleの都合で変わる——企画の朝に添えられた注意書きが、構築の当日に的中した格好である。予言の的中を喜ぶべきか、悲しむべきか。
直しは、コードを1行書き換えて現行モデルに乗り換えるだけだった。ついでに教訓もひとつ。GASはコードを保存しただけでは公開中のものに反映されない。「新バージョンでデプロイ」という一手間を忘れると、直したはずのものが直っていない。
かくして、中継サーバーは動いた。秘書が、初めて口をきいた。
(第4話につづく)

